色々な慢性疾患の治療

気管支喘息2

気管支喘息の統合治療とは? 

気管支喘息の統合治療とは、気管支喘息という病気を、西洋医学や東洋医学など多面的な視点から治療することです。

私は漢方を専門とする一開業医です。現在まで、気管支喘息の患者さんに対して、漢方を中心に、鍼灸、養生法などを行ってきましたが、多くの患者さんに対して一定の効果を得て、喘息発作のない状態を維持してきました。私の治療法は、現代医学的治療法としては標準的とは言えないと思いますが、現代医学的治療に不満を持つ患者さんに、多くの支持をいただいています。(当院がつぶれていないので。笑)

現代医学では気管支喘息の病態は、気道の慢性のアレルギー性炎症であるとされていますので、治療はステロイドホルモンによって炎症を抑えることが重要視されています。しかし、ステロイドホルモンは人体の抵抗力や免疫力を弱くする作用があります。常識的に考えれば、ステロイドの使用はちゅうちょせざるを得ません。そのような患者さんに対して、漢方薬や養生、鍼灸などの治療を組み合わせて、できるだけステロイドホルモンを使用しない治療を実践してきました。最初からこのような治療法を目指したのではなく、クチコミや紹介によって来院した患者さんからの要望に答える形で、徐々に喘息患者の治療に漢方薬や養生、鍼灸などの治療を組み合わせていきました。もちろん現代医学の治療法を否定するつもりはありませんが、病気の治療に良いと考えられる物は積極的に取り入れていった結果なのです。

喘息治療に悩みをお持ちの患者さんや漢方薬に興味を持たれているご家族の方々のために私の拙い経験を基にして著したものです。喘息の治療に対して漢方などを用いた統合医療に興味を持たれている多くの人々のお役に立てば幸いです。

私の医院では、電子カルテを導入していますが、気管支喘息の患者は約300 人登録されています。ほとんどの人は、現代医学治療に満足できずに漢方治療を求めて受診した方です。多くの人に、当院を受診した理由を尋ねましたところ、やはり投与されているステロイドホルモンについて不安であること。多くの薬剤を服用していても薬をやめれば、また元の状態に戻ってしまうこと。漢方には体質改善の効果があることを期待している、などをあげています。                                        

気管支喘息に対する統合治療の意義

1、ステロイドホルモンの減量

2、喘息体質の改善

3、喘息発作の予防

次の様な印象的な患者さんを経験しました。〔当帰芍薬散で月経痛と喘息発作が同時に改善〕

〔症例〕都内の女子大生Bさん(22)は4歳ごろに気管支喘息と診断されました。7歳のときには大きな発作で入院したことがあります。大人になってから発作の頻度は減ったものの、月経の前後に喘息発作が起こりやすく、月経は不順で、強い痛みもあります。また、頭痛やめまい、冷えなどの症状もあり、風邪もひきやすいとのことです。Bさんは虚証で、喘息の悪化が「血」の異常に関係していると判断されました。当帰芍薬散を煎じ薬で処方して服用してもらったところ、1カ月半後に月経痛は改善し、同時に喘息発作も起こらなくなりました。その後もずっと調子はいいということです。                  

現代医学でも喘息の危険因子や増悪因子として月経や妊娠はよく知られています。しかし、その治療法についての記載は教科書には存在しません。診断はできるが、対処の方法や治療法はないのです。ところが、漢方では月経や妊娠に関係するのは「血」の病(やまい)であり、「血」の病(やまい)と診断したならば、「血」を治療する薬が用意されています。この例のように、「血」の病(やまい)を治療する薬である当帰芍薬散を服用すると簡単に治療することができます。         

〔症例〕六十歳の婦人。20年前より感冒症状をきっかけに気管支喘息を発症しました。3年前よりステロイドホルモンの吸入治療を受けていますが、頻繁に喘息発作をおこし、一週間の内で半分以上は喘息発作があるという状態でした。胃腸が弱く、治喘一方という虚弱な喘息患者に用いる薬を投与しましたが改善せず、何でもよいから良くなりたいという希望があり、鍼灸治療を併用しました。定喘、肺兪、大谿という穴(つぼ)に鍼治療をおこないました。治療後に聴診してみると、治療前のぜいぜいという呼吸音は消失していました。その後、喘息発作は全く起きなくなり、週に一回鍼治療と漢方薬を併用して6か月でステロイドホルモンの治療を中止しました。現在は漢方薬のみで治療中です。良好です。

漢方薬で治療できず鍼灸治療を併用して治療できた例です。

漢方薬は体質や体力の強弱によって薬が異なります。虚実と言いますが、体質や体力の強い人は実証といい、反対に弱い人は虚証と言います。患者さんの体質、虚実に応じた治療行うと簡単に治ってしまいます。逆に患者さんの体質、虚実に反したり、無視した治療行うと、うまく治療することはできません。             

〔漢方薬は体質や体力の強弱によって薬が異なる〕のです。

虚実とは何でしょうか?

体質や体力の強い人は実証。

体質や体力の弱い人は虚証。

と簡単に理解していただいて結構です。

〔患者さんの体質、虚実に応じた治療行うと容易に治る〕のです。

気管支喘息は、従来は、種々の刺激に対して気道(空気の通り道)が反応して、その結果気道が狭窄する疾患で、しばらくすると狭窄は元の通り回復する病気と考えられてきました。しかし医学の進歩により、実は、喘息は気道の慢性のアレルギー性炎症であることが分かってきました。

慢性の気道の炎症のために、気道の狭窄が進行性に増悪することが明らかとなりました。このような発見によって、気管支喘息の治療も変化しました。慢性の気道炎症を抑える治療として、吸入ステロイド薬が、喘息治療の主要薬としての位置を確立しました。しかしながら、ステロイド薬にはさまざまな問題があり、積極的な使用にちゅうちょする人(医師、患者を含む)も確かに存在します。私も吸入ステロイド薬の素晴らしい効果は否定するものではありませんが、気道炎症を抑える治療として、東洋医学的な手段も考慮されてもよいのではないかと考えています。東洋医学的な治療を、現在の標準治療(吸入ステロイド薬を積極的に使用する)を併用することによってステロイド薬の使用量を節約できるのではないかと考えています。

本稿では、現在の標準治療(吸入ステロイド薬を積極的に使用する)に、東洋医学的な治療を併用することを、気管支喘息の統合医療と名付け、私の経験をもとにして著したものです。この一文が気管支喘息の患者さんのお役に立てば幸いです。

気管支喘息は空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸困難や喘鳴、咳が繰り返し起こる病気です。呼吸器疾忠のなかでも頻度は高く、有病率は全人口のI~4%を占めます。患者さんの気道粘膜にはアレルギー性の炎症が慢性的に起こっており、これが気管支喘息の原因です。西洋医学的な治療では、発作が起きていないときには炎症を抑える薬を、発作時には気道を広げる気管支拡張薬を使うのが基本ですが、これでうまくいかないこともあります。また、抗炎症薬の吸入ステロイド薬に抵抗を感じる方もまだまだ多いようです。当院には、こうした患者が多くやってきます。実は漢方薬にも抗炎症効果が確認されているものがいくつかあります。小柴胡湯や大柴胡湯、柴朴湯などいわゆる「柴胡剤」と呼ばれるもので、気管支喘息に広く用いられています。柴胡剤にはアレルゲンによって活性化されたリンパ球を抑制する効果や、ステロイドに似た抗炎症作用があることが証明されています。発作が起きていないときに使われる漢方薬には、このほかさまざまな種類があります。喘息の悪化要因が「気、血、水」のどこからきているかも大切です。

「気」に問題のある場合:ストレスなど精神的な原因で気管支喘息が悪化するタイプ。働き盛りの男性や精神的な問題を持つ人にみられます。半夏厚朴湯と小柴胡湯を合わせて使います。(気滞)

「血」に問題のある場合:内分泌や月経のリズムで悪化します。月経前や月経時に喘息が悪くなる患者がいますが、血のめぐりを良くする当帰芍薬散が効果があります。(?血)

「水」に問題のある場合:体に不要な水がたまる水毒が気管支喘息の誘因となっています。いちばんよく使われるのが小青竜湯です。この他、神秘湯、桂枝加厚朴杏仁湯、苓甘美味辛夏仁湯などもよく使われる処方です。(水毒)

一方、発作時に使われる漢方薬としては、麻杏甘石湯や煎じ薬の甘草麻黄湯(甘草と麻黄で構成)があります。

こうした麻黄剤はエフェドリンを含んでおり、解熱や咳を鎖めるなどの作用があります。

漢方薬を毎日続けていると発作の回数は明らかに減ってきます。気管支喘息では風邪が発作の引き金となりますが、半年、一年と服用していると皆さん風邪をひきにくくなります。これは漢方薬で体質が改善されていると考えています。とくに子供には効果が高いようです。

また、重症の気管支喘息でも、症状が落ち着いているときなら、漢方治療が適応となります。

第1章 気管支喘息とは?

気管支喘息は、有病率が全人口(1億2700万人)の約3~4%とされていますので、現在は約400万人の患者が日本に存在しています。呼吸疾患の中で最も多い疾患です。気管支喘息の症状は、夜間に好発する発作性 のぜいぜい(喘鳴),咳,呼吸が苦しい(呼吸困難)などがあり、喘息発作のために亡くなる方もおり、患者さんにとってつらい病気と言えます。

歴史的には,西洋においてはヒポクラテス(紀元前460-377年)が喘息(asthma)を“あえぐ”という意味で用いたことが知られています。中国では後漢の時代に『金匱要略』の中に、気管支喘息に一致する記載がみられます。西洋では、17世紀の終わり頃から発作的に繰り返し呼吸困難や喘鳴が生じる患者を観察し、喘息(asthma)という言葉で記載するようになりました。1962年、米国胸部疾患学会での喘息に対する次の様な定義が発表されました。すなわち「喘息とは気管および気管支の種々の刺激に対して反応性が亢進し、気道が狭窄する疾患で,自然に,あるいは治療によりその程度が変化する」と。つまり、①気道が刺激によって過敏に反応し、②自然に、または治療によっ て改善する気道狭窄が起こる病気が喘息であるとしています。                         

〔1962年、米国胸部疾患学会の喘息の定義〕

①気道が刺激によって過敏に反応する

②自然に、または治療によって改善する気道狭窄が起こる

〔1991年アメリカ衛生研究所(NIH)の喘息のガイドライン〕

①気道が刺激によって過敏に反応する

②自然に、または治療によって改善する気道狭窄が起こる

③慢性の気道炎症がある。

1991年アメリカ衛生研究所(NIH)のガイドラインでは、①、②に加えて、③慢性の気道炎症を加えています。現在はこの慢性の気道炎症がたいへん重要視されて、 慢性の気道炎症により、気道の狭窄が進行性に増悪することが明らかとなりました。この慢性の気道炎症をいかに治療するかが大きなテーマとなり、吸入ステロイド薬が、気管支喘息治療の主要薬としての脚光を浴びる時代となってきました。日本で、吸入ステロイド薬が販売されたのは1976年ですが、当時は、“少量で短期”投与でしたが、現在は、軽症持続型から中等症持続型、重症持続型まで、第一選択薬として、大量の吸入ステロイド薬が用いられるようになっています。

ここで、少し横道にそれますが、吸入ステロイド薬の歴史について簡単に解説します。1933年にコーチゾンというステロイドが単離され、構造が決定されました。1948年には、コーチゾンは関節リウマチに有効であることが報告されました。以来,さまざまの疾患,難病に試みられました。1950年喘息に対しては筋肉注射によるコーチゾンが有効であると報告されました。1950年ハイドロコーチゾンの粉末吸入,1951年,コーチゾンの経口投与,経気管支注入,ネブライザー吸入の報告がされました。1955年経口プレドニゾロンの有効性の報告が行われました。しかし,長期間連用すると,全身投与のみならず吸入の場合でも,副作用が出現することも明らかになり,副作用がステロイド薬による喘息治療の大きな障害であることが明らかになってきました。このため,肺に吸入されても吸収されない,あるいは早期に分解されるステロイド薬の開発が望まれることとなりました。1968年になって,吸入療法に適したプロピオン酸ベクロメタゾン(ベクロメタゾン)が開発され,1971年,スミスらによって,喘息治療における有効性の報告が行われました。1972年, クラークらは,ベクロメタゾンは連日投与しても下垂体・副腎系に影響がなく, 1973年には,ギャディーらはベクロメタゾンは副腎皮質機能に影響なく、1983年ウイリィアムスらは, ベクロメタゾンは1日1,000μg以下では10年以上投与しても副作用はないことを報告しました。喘息治療におけるベクロメタゾン療法の有用性が認識されるようになりました。1980年代後半の時期から,欧米においては,吸入ステロイド薬を喘息管理の第1選択薬剤と見なす意見が有力となってきました。このように、一定の投与量の範囲内では、小児に対する発育障害の懸念や成人の副腎抑制の心配はないということになっています。

しかしながら、ステロイドに対する一般の人の不安は、一掃されていないと思います。特に、小児に対する使用について、免疫を抑制し、抵抗力を弱める薬をこんなに沢山使用して、本当に大丈夫かと疑念は残ります。                           

喘息の現代医学的理解

喘息は従来考えられてきたような、単なる気管支平滑筋の攣縮による元に戻る、つまり回復可能な可逆的で一時的な気道閉塞性を示す肺疾患ではありません。慢性の気道炎症性疾患であり,気道過敏性を伴うために種々の原因により,容易に気道の閉塞症状が引き起こされます。この気道炎症は好酸球,T細胞,肥満細胞の浸潤と気道上皮細胞の損傷を伴い,長期の気道の炎症のために,気道壁は持続的に肥厚して,空気の通り道である気管支の内腔が狭くなります。これは、従来考えられていた可逆的な気道狭窄ではなく,進行性の元に戻らない非可逆的な気道閉塞となることがあきらかとなったのです。近年の研究で喘息での気道炎症は好酸球,T細胞などの炎症細胞浸潤に加えて,気道上皮細胞などの構造細胞からも種々のサイトカイン(化学物質)を遊離して炎症に大きな役割を持つことが示されて来ました。                喘息の診断

喘息の診断は一般に夜間に好発する発作性 のぜいぜい(喘鳴),咳,呼吸が苦しい(呼吸困難)などの症状によります。検査所見としては、呼吸機能測定(β刺激薬の吸入による呼吸機能の改善)により,気管支喘息の診断の確実性は増します。発病初期では夜間・早朝の咳,喘鳴,胸苦しさなどの軽度の症状で発症し,感冒,気管支炎などとの識別が困難なことが多く、喘息症状の既往の確認、さまざまな検査が必要です。

喘息の診断の要点

1.発作性の呼吸困難,喘鳴,咳(夜間,早朝に出現しやすい)の反復

2.呼吸機能は自然に,また治療により正常化ないし改善する。

3.アトピー素因-両親肉親に気管支喘息やアレルギー疾患がある。

治療

1.喘息増悪因子の除去,回避

喘息患者の気道は多様な因子で炎症を起こし気道過敏を引き起します。このような気道に刺激が加われば気道収縮発作が起きます。増悪因子を除去,回避することが大切です。特に、ハウスダストダニ,ペットの除去・回避が重要です。運動はしばしば発作の原因となりますが,運動を継続することで発作が起きにくくなることが多くあります。アスピリン過敏では他の非ステロイド抗炎症剤も避けることが必要です。感冒は最も多い増悪因子です。気管支喘息治療のガイドラインには、次の様な喘息の危険因子、増悪因子が記載されています。特に、気管支喘息のアレルギー反応を直接引き起こす原因物質(アレルゲン)、大気汚染、呼吸器感染症(感冒)などが重要です。ストレスや月経に関連して気管支喘息の発作が生じる場合があります。                                                喘息の危険因子-増悪因子

①アレルゲン

②大気汚染(屋外・屋内)

③呼吸器感染症

④運動ならびに過換気

⑤喫煙

⑥気象

⑦食品・食品添加物

⑧薬物

⑨激しい感情表現とストレス

⑩刺激物質(煙、臭気、水蒸気など)

⑪二酸化硫黄

⑫月経

⑬妊娠

⑭肥満

⑮アルコール

⑯過労

・長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(レリーバー)の種類

長期管理薬(コントローラー)

吸入ステロイド薬

経口ステロイド薬

徐放性テオフィリン薬

長時間作用性β2刺激剤 (経口,貼付,吸入)

抗アレルギー薬

メディエーター遊離抑制薬

ヒスタミンH1拮抗薬

トロンボキサンA2合成阻害・受容体拮抗薬

ロイコトリエン拮抗薬

Th2サイトカイン阻害薬

発作治療薬(レリーバー)

ステロイド薬(注射・経口)

短時間作用性β2刺激剤 (吸入・経口・注射)

アミノフィリン・テオフィリン静江

短時間作用性テオフィリン薬(経口)

抗コリン薬(吸入)

2.薬 物 療 法

喘息の増悪因子,発作誘発因子を回避・除去しても完全に症状を抑制できないことが多いです。そのために、慢性の喘息では適切な薬物療法は重要となってきます。

喘息の治療薬とその分類

薬物療法は長期管理と急性増悪(発作)の治療に分けられます。この目的のために治療薬を長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(レリーバー)の2群に分けられます。

長期管理薬(コントローラー)はその作用によって抗炎症薬と長時間作用気管支拡張薬に分けられます。抗炎症薬はステロイド薬,抗アレルギー薬,徐放性テオフィリン薬です。長時間作用気管支拡張薬は長時間作用β2刺激薬(吸入,経口,貼付)と徐放性テオフィリン薬です。徐放性テオフィリンは長時間作用気管支拡張薬であり,また,比較的低用量で気道粘膜での好酸球浸潤を抑制し,抗炎症作用のあることが知られています。

発作治療薬(レリーバー)では,短時間作用β2刺激薬が治療の主体です。吸入剤,経口剤,注射剤(エピネフリンなど)があります。テオフィリンは水溶性エチレンヂアンミン塩であるアミノフィリンおよびテオフィリン自体の水溶液が静注として投与されます。抗コリン薬は吸入で用いられます。また、急性発作の治療にはステロイド薬の注射ないし経口投与が用いられるます。