色々な慢性疾患の治療

花粉症

花粉症は、木や草の花粉が、風に乗って飛散する時に起こるアレルギーである。花粉症には季節性があり、一種類だけでなく多種類の花粉に感作されていることもある。一番重要なのは、スギ花粉症である。スギ花粉症の有病率は成人で10~20%、小児で5~10%と推定され、国民の10~20%がかかっていると言われ、まさに国民病であり患者数は一千万人以上というデータもある。どの病院の外来も、二~三月にかけては鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみなどを訴える患者であふれている。一般には春は樹木の花粉、スギ以外には、シラカバ、コナラ、夏はイネ科の草の花粉、カモガヤ、スズメノテッポウなどがあり、秋は雑草の花粉でブタクサ、ヨモギ、クワモドキ、カナムグラなどが原因抗原として重要である。

花粉症の症状は眼症状(涙、眼の痒み、充血)と鼻症状(鼻汁、鼻閉、くしゃみ、かゆみ)がみられる。重症になると、咳、全身倦怠感、熱感、頭重、抑うつ感などの症状が出現してくる。 

[病気のメカニズム]スギなどの花粉が、鼻の粘膜に接触すると、花粉は鼻の粘膜の肥満細胞と結合して、肥満細胞の中にある顆粒が細胞の外へ放出される。この顆粒には、ヒスタミンという物質が含まれている。放出されたヒスタミンは鼻の粘膜に作用して、くしゃみ、水様性鼻汁、鼻の粘膜の腫れなどの花粉症の症状が出現してくる。治療に用いる抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの鼻粘膜に対する作用を遮断し、抗アレルギー薬は肥満細胞の顆粒が細胞の外へ放出される過程を遮断する。

[一般的治療]抗原の回避(スギ花粉をできるだけ避けること):花粉症の季節には、新聞、テレビなどでスギ花粉情報が得られるので、花粉の飛散の多い日は、窓や戸を閉めておき、寝具、洗濯物を外に干さないようにする。天気がよくて、風のある日はなるべく外出をひかえる方がよい。やむを得ず外出する時や仕事上でどうしても花粉に接触する時は、マスク、めがね、帽子を着用し、帰宅して家に入る時には衣服をよく叩き、鼻をかみ、眼、顔や手を洗い、うがいをするようにする。

西洋医学的治療には内服薬と外用薬がある。

内服薬としてはポララミンなどの抗ヒスタミン薬やインタール、リザベンなどの抗アレルギー薬がよく使われる。眠気が副作用として知られているが、眠気の少ない抗ヒスタミン薬としてアレグラなどが開発され、臨床で使用されている。

外用薬としては、インタール点眼薬および点鼻薬、ザジデン点鼻薬などが用いられている。

漢方医学では「鼻水、鼻づまり、くしゃみ」などは気、血、水の考え方では「水毒」に相当すると考えて治療する。

養生としては、規則正しい生活と胃腸を丈夫にすることが大切である。暴飲暴食は体の抵抗力や免疫力を弱めて、胃腸の働きにも悪い影響を与える。胃腸の働きが悪化すると、体の中に「水毒」が蓄積されやすくなる。                

〔服薬上の注意〕

花粉症には、越婢加朮湯、小青竜湯、麻黄附子細辛湯などの麻黄剤が多く用いられる。

麻黄は、抗アレルギー作用を有し、肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑制する作用があり、エフェドリンを含有し、解熱、鎮咳、抗炎症作用がある。麻黄には、血圧上昇、頻脈、排尿障害などの副作用あるので、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患には使用禁忌であり、高齢者や高血圧症の患者には慎重に使用すべきである。また、胃腸虚弱の患者に使用すると、食欲不振や腹痛を引き起こすことがあるので注意が必要である。体力がある場合(実証)には、越婢加朮湯を用い、体力ふつうの場合(中間証)には、小青竜湯を用いる。局部に熱感や痛みがあって鼻づまりが強い時には、辛夷清肺湯を用いる。体力がない場合(虚証)には、胃腸が弱く、冷え症の時には、苓甘姜味辛夏仁湯を用い、冷え症で鼻閉や水様鼻汁のある時には、麻黄附子細辛湯を用いる。

花粉症の原因となる植物

春-樹木の花粉、スギ、シラカバ、コナラ、

夏-イネ科の草の花粉、カモガヤ、スズメノテッポウ

秋-雑草の花粉でブタクサ、ヨモギ、クワモドキ、カナムグラ

花粉症に用いる漢方薬

体力がある場合(実証)

・越婢加朮湯・体力は中等度以上で鼻閉、口渇や発汗傾向がある時に用いる。

体力ふつうの場合(中間証)

・小青竜湯・鼻水が多く、水様鼻汁や泡沫状や水様性の痰がある時に用いる。

・辛夷清肺湯・局部に熱感や痛みがあって鼻づまりが強い時に用いる。      

体力がない場合(虚証)     

・苓甘姜味辛夏仁湯・胃腸が弱く、冷え症の時に用いる。

・麻黄附子細辛湯・冷え症で鼻閉や水様鼻汁のある時に用いる。

[実例]Kさん、女性。32歳。最近数年間、3月頃から、眼の痒み、鼻汁、鼻閉、くしゃみ、かゆみの症状がみられ、花粉症に苦しめられている。漢方治療を希望して当院に初診となる。脈は沈んで細く、痩せて、色白の婦人。冷え症で、胃腸が弱い。虚証の水毒と考えて、苓甘姜味辛夏仁湯を処方した。2週間後、鼻汁は少し改善している。続けて服用して、点鼻薬の量も減って徐々に花粉症のくしゃみ、鼻汁は改善した。

〔本例の服薬指導〕苓甘姜味辛夏仁湯が処方されており、虚証である。冷え症で、胃腸が弱いことから、薬は当然、温めて、食後に服用するよう説明する。