色々な慢性疾患の治療

めまい

めまいという症状は、たいへんありふれた症状である。その原因は複雑で多岐にわたっているが、簡単には、耳の原因か、中枢神経の原因か、その他に分けて分類される。実際の臨床では、めまいの時、周囲が回転するか(回転性)、回転しないか(非回転性)ということが重要であり、また、胃腸が丈夫であるか、のぼせ、興奮、便秘があるか(実証)、体力は普通にあって、回転性や非回転性のめまいが起こるのか(中間証)、体力がなく、胃腸が弱く下痢しやすいか(虚証)を診察で確認する。一般外来には、さまざまな検査や治療を受けたが、なかなか治らず漢方治療を受けたいと希望される眩暈の患者さんがよく来院する。その場合、漢方的に、実証、中間証、虚証、寒熱(冷え症であるか、暑がりであるか)はどうか?血(末梢血液の循環障害)はどうか、水毒(水が体内に偏在した状態)などが治療のポイントである。西洋医学のメニエール病は、内リンパ水腫が原因とされていて、漢方医学でいう水毒の一種と考えられる。

〔服薬上の注意〕

平素身体が丈夫であっても、仕事で無理を重ねたり、過労、ストレス、睡眠不足が続くと眩暈が起こり易い状態になり、薬を服用する以前の養生の問題である。また、抑圧された精神状態が続くと、怒り、いらいら、興奮状態となり黄連解毒湯の適応症となる眩暈が起こるかも知れない。冷え症の有る場合に、黄連解毒湯の適応症は少ない。体力がある場合(実証)、のぼせ、いらいら、興奮のある時には、黄連解毒湯を用いる。体力ふつう場合(中間証)には、回転性のめまいの時には、沢瀉湯を用いる。のぼせ、立ちくらみがあり、非回転性のめまいの時には、苓桂朮甘湯を用いる。体力がない場合(虚証)には、冷え症、下痢があれば、真武湯を用いる。胃痛、冷え、下痢などがあれば人参湯を用いる。全身倦怠、胃腸虚弱の時には補中益気湯を用いる。頭重、貧血、冷え症や?血の症状がある時には当帰芍薬散用いる。

体力がある場合(実証)

・黄連解毒湯・のぼせ、いらいら、興奮のある時に用いる。

体力ふつうの場合(中間証) 

・沢瀉湯・回転性のめまいに用いる。

・苓桂朮甘湯・のぼせ、立ちくらみがあり、非回転性のめまいに用いる。

体力がない場合(虚証)

・真武湯・冷え症、下痢などがあり、非回転性のめまいに用いる。

・人参湯・下痢、胃痛、冷えなどの時に用いる。

・補中益気湯・全身倦怠、胃腸虚弱の時に用いる。

・当帰芍薬散・頭重、貧血、冷え症や?血の症状がある時に用いる。

〔症例〕54歳、男、眩暈、立ちくらみ

現病歴・最近睡眠不足であり、横になって寝返りをうつと頭が「ふー」となる。1997年2月15日朝起きて、めまいの為に立ち上がれない。ふらついて、非回転性のめまいである。2、3分で改善するという。この様な症状が毎日続くので、2月20日、当科を受診した。血圧140/70。脈は弦。腹部は力がある。苓桂朮甘湯を3日間投与したが、症状は少しずつ悪化していて、1日中ふらつくという。

2月22日、沢瀉湯(沢瀉10、白朮4)を煎薬で与えた。

2月23日、午前中はふらつきがあったが、沢瀉湯を午前11時頃服用して午後にはふらつきは消失した。

2月25日、診察室にニコニコして入ってきた。9割位の症状が改善した。

〔本例の服薬指導〕通常は、苓桂朮甘湯は立ちくらみや非回転性のめまいに用い、沢瀉湯は回転性のめまいに用いる。しかし、非回転性のめまいにも沢瀉湯を用いる場合がある。吐き気が強い時は、冷やして服用すると良い。仕事上の過労、ストレス、睡眠不足などは眩暈が起こり易い状態になるので、心身の安静の安静を図り、その上で、薬を服用するようにする。

〔注〕沢瀉湯(煎じ薬として沢瀉10、白朮6)、また沢瀉末1g、白朮末0.6gを1日3回に分けて服用。

独り言

私自身、めまいの経験がある。今から10年前、一生懸命、ある原稿を睡眠時間を削って書いていた。その頃は電車で横須賀から横浜まで毎朝通勤していて、ある朝、駅のホームで電車に乗ろうとした時、ふらっとしためまいがして、電車とホームのすき間に転落した。駅員や乗客に助けられことなきを得たが、自分自身、過労、ストレス、睡眠不足でめまいが起こることを実感した。このようなめまいの治療は簡単である。休養とよく眠ることで治る。この時はCTスキャンをとり、脳外科の医師の診察を受けたが正常であった。

めまいの原因として、脳腫瘍、聴神経腫瘍、脳血管障害など生命にかかわる重大な病気の場合もあるので、めまいの患者さんは、内科、神経内科、脳神経外科、耳鼻咽喉科の専門医の診察を、必ず一度は受けるのがよい。