色々な慢性疾患の治療

便秘

「女性をみたら便秘と思え」という言葉があるほど多くの人が便秘で苦しんでいます。特に女性の便秘は、男性の2・5倍というデータがあります。便秘になると排便が順調に行なわれず(3~4日以上排便がない)、硬い大便のために排便が困難になり、大腸の中にガスが溜まり腹部膨満の症状がみられます。

普段は便秘でなくても、旅行へ行って、枕が変わっただけでも便秘になりますし、朝忙しくて排便を我慢してしまっても便秘になります。ここで、便秘を理解するために、簡単に排便のしくみを説明します。

食物は口に入って、唾液と混じりあい、食道を経て、胃に入ると胃酸と混じってお粥状のものが形成されます。さらに、十二指腸に入ると、膵液と胆汁と混じりあい、小腸で三大栄養素が完全に吸収され、粥状物は胃から出て約五時間で盲腸に到達します。そして、盲腸から横行結腸の通過に約十時間かかり、その間に、粥状物から水分や電解質が吸収され、半液状物から半固形物へ変化します。横行結腸からS状結腸にかけての便の移送は高い圧力の推進運動により行なわれます。さらに、便がS状結腸を経て直腸に流入すると便意を催します。朝食後に排便する習慣の人が多いのはこの理由からです。直腸に便が流入すると便意を催し、肛門括約筋をゆるめ同時に深呼吸し、息むことにより、胸腔、腹腔の内圧を高めて便を排出しやすくします。

便秘はさまざまな原因で起こってきます。便秘には、ガンやヘルニアなどの原因が明らかな二次性便秘と原因が特定されない特発性便秘があります。ここでは特発性便秘の中で最も重要な直腸性便秘について解説します。

直腸性便秘(排便困難症)は便が直腸に下りてきて、便意があっても仕事や肛門痛のために排便を我慢してしまい、直腸の排便反射が低下するために起こります。この便意を我慢してしまうために便秘になる直腸性便秘はたいへん多く、とくに女性は早朝に、食事の支度と片づけ、お弁当の用意など家事が忙しいためか排便の時間が十分に取れず、便意を我慢してしまうために、便秘になることが多いと言われています。また、便意を催しても、我慢していまうことが多くそのために便秘になることが多くあると言われています。

[一般治療]①、便意を我慢しない。便意を催したらすぐトイレに行けるように時間に余裕をもつことが大切です。②、運動することで、腸の動きを刺激して、便秘を防ぎます。③、規則正しい生活をします。不規則な生活は排便の習慣を乱します。④朝食後に排便時間を確保します。⑤、食物繊維(野菜、穀物、いも類)は腸内の水分を吸収して膨らみ、便の量を増やし、軟らかくして腸の蠕動運動を高めます。便のボリュームを増やすことで便秘を防ぎます。⑥、ヨーグルト、みそ、納豆な発酵食品を多く食べましょう。

漢方では、大便は川を流れる舟に例えて考えられます。舟(大便)がスムーズに流れるためには、舟(大便)の周りの水分が大切で、便に潤いを与える麻子仁のような種子の漢方薬が、水分が少なくて便が硬くなる便秘に用いられます。また、勢いよく舟(大便)を流すには、大黄のような激しい下剤が用いられます。

また、漢方では、患者さんの体力(虚実)によって便秘の治療方法が異なります。大黄などの強力な下剤は 体力がある場合(実証)に用い、麻子仁などの種子や当帰、人参などは体力がない場合(虚証)の便秘に用いられます。    

体力がある場合(実証)

・大柴胡湯:便秘や季肋部に苦満感がある時に用いられます。

・防風通聖散:肥満体で便秘を目標として用いられます。

体力ふつうの場合(中間証)

・大黄甘草湯:常習性便秘に広く用いられます

体力がない場合(虚証)

・桂枝加芍薬大黄湯:体質虚弱で冷え、腹痛があり軽度の便秘の時に用いられます。

・補中益気湯:体質虚弱、体力低下、食欲不振の時に用いられます。

・小建中湯:虚弱な小児に用いる機会が多く、飴が入っているので甘く飲みやすい。

鍼灸に興味のある方は、神門(沢田流)、大横に簡便灸(千年灸、カマヤミニ)のお灸をすると便通に効果があります。

[実例]十二歳の女子。小学校に入学した頃から便秘になり、一週間でも排便のない時がある。やや痩せ型の体格で、顔色はよくない。小建中湯という身体を温めて、胃腸を丈夫にする漢方薬を与えて、朝、必ずトイレに座ること、食物繊維を多く取り、ヨーグルトを食べるように一般的な指導をしたところ、二週間後に便秘は、少し改善した。下剤の大黄を〇・二グラム加えて、便秘はほとんど改善した。二か月間、漢方薬を服用して、薬を徐々に中止したところ、便秘は治癒した。その後三年間、風邪などで来院の際、様子を聞いているが、便秘の再発はない。