色々な慢性疾患の治療

不整脈

心臓は1分間に60回程度の規則正しい拍動をしています。不整脈とは、この心臓の規則正しいリズムが何らかの原因によって、リズムの乱れが生ずる疾患です。自覚症状としては、動悸すなわち、突然に「どきっ、どきっ」と感じたり、胸部が圧迫される感じなどがあります。不整脈は健康な若い人にも、しばしば無害性の心室性期外収縮として起こることがあります。ほとんどの場合、これらは治療する必要はありません。しかし、不整脈が心臓病(急性心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症など)を伴う場合は、治療が必要となることがあります。さらに、薬剤(強心剤ジギタリス、抗ガン剤アドリアマイシン、一部の抗精神薬)などは、心室性不整脈などを引き起こす場合があります。また、利尿剤の副作用として低カリウム血症になり、その結果として 不整脈が出現することもあります。不整脈の通常の治療は、不整脈の誘発因子や不整脈の原因を治療することと抗不整脈薬の服用ですが、抗不整脈薬は、副作用の多い薬で、抗不整脈薬の投与により、さらに、副作用として、新たな不整脈が出現し、重篤な状態に陥ることもあります。

不整脈を誘発因子としては、ストレスやコーヒーや紅茶、睡眠不足などがあります。ほとんどの場合は、抗不整脈薬を服用する必要はありません。ごく一部の不整脈で、血圧を著しく低下させて失神などを起こすものは、積極的な治療が必要です。この重症の不整脈には、脈の早くなるものと遅くなるものがあります。脈の早くなるものには、発作性頻拍症(突然に脈が早くなる病気)などがあり、脈の遅くなるものには、完全房室ブロック(脈が途切れる病気)があります。ともに、血圧が著しく低下して失神などを起こしますので緊急の治療が必要です。それ以外は、緊急治療の必要な不整脈は多くありません。

不整脈の診断は心電図や24時間心電図検査などで行われます。また、不整脈の原因を追求するために、心臓超音波検査なども行なわれます。

現在、多数の抗不整脈薬が発売されていますが、そのいずれも重篤な副作用(抗不整脈薬がさらに別の不整脈を引き起こす作用や心臓の働きを抑制する作用など)が見られます。心臓内に挿入したカテーテルという管によって不整脈の原因となる心臓の筋肉を高周波通電して破壊し、不整脈を治療する方法が広く行われていますが、一定の危険性があります。慎重に行われる治療法と考えます。

養生としては、不整脈を誘発したり、増悪させる要因である、ストレスや自律神経の異常(交感神経の過緊張)を改善することが重要です。カリウムなどの電解質異常、薬剤誘発性不整脈、心不全、心臓の虚血などを治療することも重要です。   

漢方治療は重篤な副作用が、ほとんど見られないという点から、漢方薬により、動悸や不整脈を治療することは、大変、意義のあることと考えられます。不整脈に対する漢方薬としては、次の様な処方があります。

〔非発作時〕

体力がある場合(実証)

・柴胡加竜骨牡蠣湯・体力は中等度で季肋部に苦満感があり、精神不安などがある時に 用いられます。

体力ふつう場合(中間証) 

・炙甘草湯・動悸や手足のほてり、口渇などがある時に用いられます。動悸や不整脈の 第一選択薬です。

体力がない場合(虚証)

・桂枝竜骨牡蠣湯・体質虚弱で神経過敏や精神不安などがある時に用いられます。

〔発作時〕

・桂枝甘草湯・虚実に関係なく、発作時に頓服として用います。

〔実例〕68歳、女。1992年、6月、胸痛と不整脈のため、近くの総合病院に入院した。心臓カテーテル検査を受け冠動脈は異常なく、24時間心電図で、心室性期外収縮の多発、3連発心室性期外収縮、発作性心房細動が認められ、治療をうけた。1993年4月13日、動悸を訴え、漢方治療を希望して当院に来院した。心電図、24時間心電図などを施行し、前回と同じ所見であった。そこで炙甘草湯を与えた。数日間、服薬して、動悸は消失した。2週間分服薬して、自分の考えで中止した。約2か月半の後の7月9日、再び動悸を訴えて、来院した。炙甘草湯を再び与え、その後は、動悸は消失した。