色々な慢性疾患の治療

慢性腎炎

人間ドックや健康診断において、尿検査は広く行なわれている。偶然に尿にタンパクが出ているとか、血尿があるとか指摘された場合、慢性腎炎が偶然の尿検査によって診断されることがある。慢性腎炎とは慢性に経過する腎臓炎のことで、タンパク尿や血尿などが特徴である。むくみや高血圧の症状を有することもある。徐々に腎臓の働きが低下し、腎不全や尿毒症となり、人工透析を必要とする状態になることもある。西洋医学的治療は慢性腎炎には決め手となる治療法はない。利尿剤や降圧剤を使用するくらいである。ところが、漢方薬の中には慢性腎炎に有効なものがある。漢方薬を使用していると、尿所見が改善したり、クレアチニンという腎機能を表す検査データが改善することをしばしば経験する。西洋医学的治療と漢方薬を併用することはたいへん有望な治療法と考えられる。

〔服薬上の注意〕

慢性腎炎において、小柴胡湯や柴苓湯は多く処方される薬方であるが、この薬には甘草が含まれており、浮腫や低カリウム血症を引き起こすことがあり注意が必要である。また、柴胡剤であり間質性肺炎を引き起こすことがあり、小柴胡湯や柴苓湯を服用中の、咳や息切れなどの症状の出現には注意が必要である。しかし、筆者が十数年の漢方の臨床の中で慢性腎炎に対して、小柴胡湯や柴苓湯を用いたが、浮腫や低カリウム血症などの副作用の経験はない。体力がある場合(実証)には、口渇、尿が少なくて浮腫のある時は、五苓散を用いる。季肋部に抵抗感がある者には、小柴胡湯を用いる。体力がない場合(虚証)には、虚証で?血のある時には、当帰芍薬散を用いる。腰痛、高血圧などの症状があれば、八味地黄丸を用いる。

慢性腎炎の表

体力がある場合(実証)

・五苓散・口渇、尿が少なくて浮腫のある時に用いる。

・小柴胡湯・季肋部に抵抗感がある者に用いる。

・柴苓湯・季肋部に抵抗感があり、口渇、尿が少なく、浮腫のある時に用いる。

体力がない場合(虚証)                            

・当帰芍薬散・虚証で?血のある時に用いる

・八味地黄丸・腰痛、高血圧などの時に用いる。

〔実例〕42歳の女性。某大学病院で慢性腎炎と診断されている。タンパク尿と血尿があり高血圧症も合併していて、降圧剤を服用中であるが、漢方治療を希望して来院した。虚証と実証の中間証と考えて、降圧剤はそのまま服用して、当帰芍薬散と五苓散を合方して投与した。2、3か月は変化がなく、8か月頃より、血尿が少なくなり、タンパク尿も減少してきました。一時的に尿所見が悪くなることはあるが、徐々に改善してきた。1年後には、血尿は消失した。タンパク尿は痕跡程度である。現在も治療中である。

〔本例の服薬指導〕当帰芍薬散と五苓散が処方されており、中間証と考えられる。当帰芍薬散の当帰と川?は胃腸障害を引き起こすことがあり、胃がもたれたり、胃痛、むかつきの症状が出現することがあることを説明する。五苓散は、漢方の利尿薬として知られており、尿量が増加する場合のあることを説明する。