ガンに対する漢方治療の実例

ガンに対する漢方治療の実例

当院では癌(ガン)の漢方治療をメインのテーマとしており、様々なガンの患者さんが、来院されています。ガン治療の原則は、基本の薬として、漢方薬を用いて、その上で虚証実証を考慮して癌(ガン)に対して、化学療法や免疫療法などを漢方を中心に組み合わせた治療を行っております。実際の実例を紹介します。


ガン治療の実例

〔症例1〕

42歳の女性がスキルスタイプの胃ガン(ボールマン4型の進行ガン)の漢方治療を希望して受診しました。  春頃に胃部不快感のために近くの医院で胃内視鏡検査を受けたところ胃ガン(ボールマン4型、スキルスタイプ)と診断され、某医科大学外科で手術を受けました。手術の時に腹膜および全身への転移が発見されました。手術後2週間で退院しました。ガンに効く漢方薬を希望され当院を受診しました。私は、「ガンに直接効く薬はあまりありませんが、免疫力を高める薬はありますので用いてみましょう。」と説明し漢方薬を処方しました。手術後であり、漢方的には、全身の機能低下(気と血の虚証)が目立ちましたので、十全大補湯を選択しました。十全大補湯は、体内の気と血を補う作用があります。大学病院の外科でガンの化学療法を併用しました。その後、6年間生存して転移を持ちながらも、元気に家事もこなし、当院で漢方治療を行いました。7年目以降は、当院への通院は中断しており、経過は不明です。おそらく亡くなられた、と考えています。  この患者さんは、極めて悪性のスキルスタイプの胃ガンですが、通常ですと5年生存率は10~20%ですが、奇跡的に6年間も生存された方です。  スキルスタイプの胃ガンは、胃ガンの中でも最も悪性のガンです。私の大学の同級生の一人もスキルスタイプの胃ガンで発症後、数か月で亡くなっています。また、ある有名なアナウンサーの方がこの同じ病気で亡くなられたということです。そのような悪性の病気が6年も生存したということは、一般的には信じられないことです。私もこの患者さんのことを友人の医師の話したところ、それは診断が間違っているに決まっている。と一言で否定されました。もちろん、診断は大学の病理でなされたもので、診断に誤りはありません。  ガンは、現在の死亡原因の第一位です。治療については初期の段階であれば、外科手術によって、全部の癌を取り除くことは可能で、根治することもできます。しかし、転移がすでに存在していたり、進行したガンについては、現代医学においても完全に治療することはできません。がんに対する標準治療は、手術に加えて、抗癌剤等による化学療法や放射線療法、免疫療法等が行われます。しかし、その治療効果は必ずしも満足すべきものとは言えませんが、漢方治療を併用することにより、標準治療の副作用や短所を補うことができます。漢方的な言い方では、気や血をめぐらせ苦痛を軽減し、生活の質を向上させる得る場合が多くあります。漢方は患者に生きる希望を与える一つの有力な手段であるかもしれません。


漢方は患者に生きる希望を与える

新しい標準治療=外科手術+抗ガン剤+放射線治療+免疫療法+漢方薬

〔漢方の治療〕

ガンにたいする漢方薬として、十全大補湯、補中益気湯、四君子湯などを基本処方として用います。実際に処方では、十全大補湯に紫根、猪苓、白花蛇舌草、半枝連、カワラタケ、よく苡仁、菱実などを加えます。最近は、十全大補湯を基本にしてさまざまな臨床上の試みがなされています。私は十全大補湯+αとして、十全大補湯にさまざまな生薬を加味して治療しています



〔症例2〕

Cさん、 脳腫瘍、 53歳・男。6年前、仕事中に倒れ、救急車で病院に運ばれ脳腫瘍と診断されました。某有名病院で手術を受けましたが、病理学的診断では最も悪性度の高い神経膠腫でとのことでした。腫瘍を全部取ることはできず、当時余命1年と言われました。当院を受診して、漢方治療(十全大補湯加よく苡仁菱実)を行い、放射線、抗ガン剤も行っていただきました。その約6カ月後に、MRIの検査をしてみると腫瘍は完全に消失していました。その後、脳神経外科で経過観察中ですが、6年経った現在も全く再発なく、異常はないということです。その後、この患者さんから多くのガン患者を紹介していただきました。 〔解説〕最も悪性度の高い神経膠腫の患者さんで、腫瘍を全部取り切ることはできず、もうだめだと言われた患者さんです。漢方薬の十全大補湯加味を基本に投与して、放射線、抗ガン剤の投与を続けて、脳腫瘍が奇跡的に消えてしまった患者さんです。


〔症例3〕

Dさん。57才男。大腸癌、肝臓転移 に十全大補湯 大腸がんと診断される1年半前に便に血がまじっていたという。。痔と思っていたそうですが。X年8月検査を受け、大腸がんと診断され手術を受けました。平成X年10月 CEA 3.5。11月CEA 7.4と上昇して、X+1年3月、肝臓内に大きさ2cm くらいの転移性腫瘍が見つかりました。平成X+1年4月当院初診となり、十全大補湯よく苡仁菱実を処方しました。X+1年8月某有名病院で肝臓の手術を行いました。普通は5カ月で3~4倍になると言われ、5cm ぐらいになっているはずだといわれたそうです。しかし、大きさは2cmのまま不変で肝臓を10分の1切除しました。外科の先生からは、奇跡的だといわれた。漢方がよく効いていると思われると言われたそうです。約8年間経過を見ていますが、がんの再発はみられていません。
〔解説〕
大腸癌の肝臓転移 に対して十全大補湯加味を処方した患者さんです。ガンが大きくならず、漢方薬でガンの成長を止めた例に相当するかもしれません。


〔症例4〕

Eさん。44才女性。X年1月初旬、 有名病院で乳癌と診断され、診断されたその日に当院を受診しました。手術を受けるまでの期間と手術後の治療も漢方薬による治療を希望しました。その後一貫して十全大補湯加紫根よく苡仁を服用していただきました。X年1月下旬乳ガン手術を行いました。その後、手術後放射線療法を行いました。NCCという腫瘍マーカーは高値でしたが、その後1年半服用して腫瘍マーカーは下がり、正常値に入りました。現在6年半後も良好に推移している。現在のところ明らかな局所の再発や転移はみられていません。
〔解説〕
乳癌の手術後に放射線療法を行った患者さんで、NCCという腫瘍マーカーの高値が続いていましたが、漢方薬の服用により、徐々に腫瘍マーカーが低下して、遂に正常になった良好な経過の患者さんです。


〔症例5〕

Bさん、40歳の女性。乳癌の手術後、肝臓や全身に多発性の転移が見つかり、余命数カ月と某病院で診断されました。私の医院で漢方治療を開始しました。漢方的に虚証と診断して、十全大補湯紫根よく苡仁猪苓を投与し、養生法の指導をして治療し、抗ガン剤の服薬も続けていただき、約10年間生存しました。この方は、前向きでプラス思考の人で、自分の病気によかれと思うことは、積極的に実践しました。ご本人も漢方薬の効果であると話されていました。とても楽観的な性格の方でした。
〔解説〕
乳癌の手術後で、全身に多発性の転移があり、余命数カ月と診断されている患者さんですから、当然虚証の患者さんです。漢方的には、気と血が虚してどうにもならなくなった状態と考えられます。漢方薬では、気血を両方補う十全大補湯加味を処方しました。漢方薬を基本にして治療し、その結果、約10年間も奇跡的に生存した方です。


〔症例6 〕

Fさん、78才男・X年、悪性リンパ腫と診断され、都内の有名病院で悪性リンパ腫の化学療法を受け、同時に、漢方薬を希望して当院を受診しました。十全大補湯、よく苡仁で約6年間治療しています、その後、病院では抗ガン剤を中止して、3年半になるが、検査では全く異常なく、ほぼ治癒の状態であるということです。
〔解説〕
悪性リンパ腫の患者さんで、化学療法と漢方薬を同時に服用していただいた患者さんです。約6年の経過の後に、化学療法を中止して漢方薬のみの服用でほぼ治癒の状態となった方です。


〔症例7〕

Gさん、50才・女性。X年、某有名病院で卵巣癌の手術をした。その翌年、骨盤に小さな骨転移が見つかり2回目の手術を行いました。抗癌剤の治療も受けましたが、X+4 年6月に、腫瘍マーカーが上昇していて、骨盤にCTスキャンで2cm のがんが見つかりましたが、抗癌剤は効果はありませんでした。X+4 年10月病院受診。腫瘍はこぶし大の大きさで、手術は不可能と言われ、放射線治療を受けました。X+4 年11月漢方薬希望して来院。十全大補湯紫根よく苡仁猪苓を処方した。腫瘍マーカーの値が半分となり、腫瘍を持ちながら、漢方治療をして、5 年後も元気で通院中である。〔解説〕卵巣ガンの骨転移の例ですが、完治している訳ではなく、転移を持ちながらガンと共存している患者さんです。しかし漢方薬により、腫瘍マーカー値の改善をみています。


〔コラム〕

サイコ (柴胡)Bupleuri Radix 〔基原〕セリ科のミシマサイコBupleurum falcatum Linne (Umbelliferae)の根である。 〔効能〕①解熱作用、②抗炎症作用、③抗ストレス作用 〔解説〕小柴胡湯、大柴胡湯、加味逍遙散などに配合される。サイコを主要な漢方薬とする小柴胡湯にはB型肝炎による肝臓ガンの発症を予防する効果があることが確認されています。〔用量〕3~8gを用いる。